インフラシェアリングを知る column

2024.09.10

【第7回】屋内インフラシェアリング・ソリューション10周年 ~担当者が明かすサービスの裏側

JTOWERの屋内インフラシェアリング・ソリューションは、2024年9月にサービス開始から10周年を迎えました。
今回のコラムでは、インフラシェアリング・サービスを立ち上げてきた当時のエピソードやサービスの裏側についてご紹介したいと思います。

「インフラシェアリング」という言葉も一般的ではなかった頃にサービスを開始

延床面積で数十万㎡を超えるような大型の建物では、安定的に携帯電話の通信環境を提供するために、建物独自の通信環境整備を施す必要性が高くなります。

屋内の通信環境整備にインフラシェアリングを活用することで、携帯キャリアにとっては、設備投資・運用費用が削減できることはもちろんのこと、不動産事業者にとっては、携帯キャリア各社との調整窓口一本化でき、建物内のスペースや電力削減、工事回数も減らすことができ、環境にも配慮した効率的なネットワーク整備が実現します。

屋内インフラシェアリング・ソリューションのイメージ

近年、屋内の通信環境整備をインフラシェアリングにて行うことは広く一般化し、サービスを提供する事業者も徐々に増えつつあります。しかしJTOWERが創業した2012年当時は、インフラシェアリングという言葉自体も一般的ではなく、導入は簡単には進みませんでした。

JTOWERは、共用装置の開発から、導入後の保守・運用に至るまで、一連の体制を構築していることが強みです。装置の開発は、携帯キャリアの要求品質を踏まえ、自社で仕様を策定し、当該仕様をもとに、装置ベンダーにて製造を行っています。
事業の開始にあたっては、携帯キャリアとの仕様検討・接続試験、携帯キャリア側での認証取得、携帯キャリアとの運用フロー構築等が必要となり、サービス開始までには長い期間を要することになりました。ただ、装置を自社開発しているからこそ、携帯キャリア各社の技術陣からの質問にも即座に回答することができ、不具合にもすぐに対応できます。
インフラシェアリングには携帯キャリア各社の通信品質を担う重責があります。携帯キャリアに受け入れられる事業体制を築いてきたことで、一つひとつの導入実績を積み上げ、日本国内における通信インフラシェアリングを築いてきたと自負しています。

自社で設計ツールも開発し効率化が進む

JTOWERでは、導入工事の際にも工程管理だけでなく、電波のカバーエリア設計も担っており、電波伝搬の基礎的な知識に加えて、様々な導入実績により蓄積されたノウハウをもとに、施設の特徴に応じた最適な設備配置を提案しています。

私がJTOWERに入社をしたのは2014年のはじめで、その頃は、商用サービスの開始に向け、オリジナル共用装置の開発や運用体制の構築など、国内で前例がない中、あらゆるサービスのベースを構築している真っ最中でした。私は、電波のカバーエリア設計の方針策定を担当することとなりました。

立ち上げ当初はアナログな方法で計算式を処理し、一つひとつの設計を手作りで行っていたのですが、その後、自社で設計ツールの開発も行い、効率化が進みました。実績も徐々に積み重なり、様々なカテゴリの物件を設計していく中で、着実にノウハウが蓄積され、施設の特徴に応じた最適な設備の配置をご提案することが可能となりました。

電波のエリア設計が難しいのは、地下が深い建物やアリーナ・スタジアム

2014年9月に、「イオンモール多摩平の森(東京都 日野市)」で最初の商用サービスを開始して以降、少しずつ導入件数が増え、2016年5月には携帯キャリア3社が利用を開始し、2020年3月には楽天モバイルが加わって4社の利用するサービスとなりました。
また2020年10月には、日本初となる5G Sub6帯域に対応した共用装置の開発を完了し、同年11月、東京都庁に初めて導入されたのを皮切りに、導入が加速しています。
導入物件数は、2020年10月に累計200件を達成し、2024年6月末時点では589件と、全国で約600件という規模まで拡大しました(4G/5G、国内)。

導入施設のカテゴリも当初は商業施設やオフィスビルが中心だったところから、現在では、病院、アリーナやスタジアム、物流施設、空港など様々な施設で導入が進んでいます。

中でもエリア設計が難しいのは、地下が深い建物です。建物の地下は、壁の厚さにもよりますが、エリア化するためにかなり密にアンテナを置く必要があります。多数のアンテナを置くとコストがかさみますので、過剰ではないかと言われることも多いのですが、計算上の確認はもちろん、これまでの経験を踏まえ、必要なアンテナ数とその配置をご提案しています。

ここ1~2年の実績では、アリーナやスタジアムの導入実績が増えています。新築だけでなく、過去に建設されたアリーナやスタジアムでも、近年のテクノロジーやサービスの進化に合わせ、電子決済や動画配信、リアルタイム投票など、通信環境が後から必要になり、ご相談をいただくケースも増えています。

アリーナやスタジアムも、エリア設計は非常に難易度が高いといえます。大規模な施設になると、一度にかなりの人が集まるため、インフラシェアリング事業者としての非常に難しい調整が求められます。ただ、アリーナやスタジアムの対応実績が増えていく中で、私たちのノウハウも蓄積されてきており、快適な通信環境の整備に向け、まだまだ改善していける領域だと考えています。

アリーナやスタジアムも、エリア設計は非常に難易度が高いといえます。大規模な施設になると、一度にかなりの人が集まるため、セクター数を増やしたいという携帯キャリアのご要望が強いものの、キャリアごとにセクター数のご要望も異なりますし、電波の干渉を受けやすく、インフラシェアリング事業者としての非常に難しい調整が求められます。ただ、アリーナやスタジアムの対応実績が増えていく中で、私たちのノウハウも蓄積されてきており、快適な通信環境の整備に向け、まだまだ改善していける領域だと考えています。

2024年3月導入 LaLa arena TOKYO-BAY(アリーナ施設、画像提供:三井不動産株式会社様)

今後も携帯キャリア各社や幅広いパートナー企業とも連携し、5Gならではの技術に対応できるよう、インフラシェアリング事業者も進化を続けていきたいと考えています。

関連:屋内インフラシェアリング・ソリューション 10周年特設サイト

※敬称は省略させていただきました。
※記事中の内容は公開時点のものとなります。

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