学校法人立命館「立命館大学 大阪いばらきキャンパス H棟~TRY FIELDへ」

屋内インフラシェアリング 2024年2月導入
文教施設

  • 所在地

    大阪府 茨木市

  • 延床面積

    約47,000㎡

  • 構造

    地上9階

インフラシェアリングで基地局設置にかかる工数を大幅に削減

街と大学を隔てる塀がなく、公園と一体化した開放的なキャンパスが広がる立命館大学大阪いばらきキャンパス。行政と大学の連携により、防災公園、商工会議所などの公共施設、ホールなどの市民開放施設と大学施設が融合した施設として開発され、2015年の開設以来注目を集めるこのキャンパスに、2024年4月、新たな施設となるH棟が開設されました。
映像学部・研究科と情報理工学部・研究科が移転し、デジタルとクリエイティブの融合により進化する新たな学びの場として誕生した新施設で、共用部の通信環境整備にJTOWERの屋内インフラシェアリング・ソリューションを採用いただきました。新棟の特徴や通信環境整備の方針などについてお話をうかがいました。

お話をうかがった方

学校法人 立命館
財務部 管財課
増田幸治 様

デジタルとクリエイティブの融合により進化し新たな学びを展開する新施設

―大阪いばらきキャンパスと、新たに竣工したH棟 の建設の経緯、コンセプトについて教えてください。

立命館大学大阪いばらきキャンパスは、2015年4月に「アジアのゲートウェイ」「都市共創」「地域・社会連携」をコンセプトとして開設しました。茨木市と連携し、公園と一体となった敷地には、ホールやライブラリー等を備えた「立命館いばらきフューチャープラザ」があり、市民にも開かれた施設となっています。
2024年4月、新たに竣工したH棟は、京都の衣笠キャンパスから映像学部・研究科、滋賀のびわこ・くさつキャンパスから情報理工学部・研究科が移転し、デジタルとクリエイティブの融合により進化し新たな学びを展開する施設と位置づけられています。
新型コロナウイルスの感染拡大以前からH棟の建設は検討されていましたが、コロナ禍がスケジュールを加速させ、設計にも大きく影響しました。
2020年の4月から大学に全く来られない時期が2か月ほど続いた中で、もともと実験的に考えていたオンラインの授業が一気に進展しました。当時、建設を延期する施設計画が多くある中で、このH棟は逆に、2020年7月の時点で2024年に開設することを決め、最速のスケジュールで検討を進めることになりました。
コロナ禍への対応期に設計を進めてきましたが、いずれはコロナ前同等に登校できる日が来るということを前提に、オンラインの良さも取り入れながら、リアルも重視し、ハイブリッドの考え方で施設を検討してきました。

そうして竣工を迎えたこの新棟建設を契機に、キャンパス全体を「TRY FIELD」 と名付けました。
何が起きるか予測のつかないこれからの時代、就職したらずっとその会社にいる、という時代でもありません。起業も含めた様々な選択肢をもつ力を育んでいくために、大学のうちに失敗を恐れずにやってみること。そしてこのキャンパスは、そんな挑戦を後押しするということをコンセプトとしています。

また、オンラインとオンサイトのハイブリッドな学びにも対応しています。今の授業は、1限目は教室で、2限目はオンライン、3限目はまた教室で…というスタイルも多く、施設内には「コネクティッドラーニングコモンズ」と呼ばれるスペースが多数設けられています。学生同士で共に学び合えるオープンなスペースから、簡易的な間仕切りがありオンラインで授業を受けたり、自習も可能なセミクローズドなスペースや、完全個室のボックスでオンライン面談できるようなクローズドなスペースもあり、学生の学びや就職活動などのための幅広いニーズに応えられる設備を用意しています。

―新棟には、国内でも最先端の設備が多数備わっていることで注目されています。

特徴的な施設の一つが、ひな壇状の大教室「ラーニングインフィニティホール」です。6人一組で38組のグループワークが可能です。各ブースにモニター、スピーカー、マイク、カメラ、有線の環境があり、それぞれの席でのワークもできるし、その成果を全体にも展開できます。さらに、外からの参加者もオンラインでつなぎ一緒に活動ができます。使い方はまだまだ模索中ではありますが、講義、講演、研修、グループ発表…使い方の可能性は大きく、今後もさらに進化を続けていく教室です。

もう一つは、「デモストリート」です。H棟の新設に合わせて移転した情報理工学部・研究科はもともと1つの校舎に、多数の研究室がありました。ただ、研究室はつながりが限定的で、他の研究室のことはあまりわからない状態でした。
新たな施設では、研究室をガラス張りとし、その通路は、避難通路は確保しながらも、研究室の前1mほどの少しはみ出したエリアを設け、LANや電源も備え、ロボットなどの成果物のデモンストレーションをしたり、センサーを置いて人流のセンシングをしたり、研究成果や取組みをアピールできるようにしました。これまで閉じていたそれぞれの研究室がお互いに触発し合う機会も増えると考えています。

―H棟の建設にあたり、通信環境についてはどのような点を重視し検討されていたのでしょうか。

研究や授業では主に大学側で整備しているWi-Fiを使用し、一部の共用部では公衆通信が利用されています。
学生の通信環境へのニーズは極めて高く、施設内どこにいても常につながっていないと不便と感じます。特にこのキャンパスは、「キャンパス全体をラーニングプレイスに~いつでも、どこでも、誰とでも、学び、学び合える~」という打ち出しをしており、広くとられた廊下やコミュニケーションスペースなど、至るところで学べるというコンセプトなので、通信環境が全館で十分に整っていることは、最低限のレベルとして必要でした。
今の学生にとっては、教室の机、椅子、通信環境…というくらい、あって当たり前という感覚なのです。

それぞれの携帯キャリアと何一つやりとりをすることなく、すべてワンストップ。JTOWERとのやりとりだけで進めることができました

―このような先進的な取組みを実践するH棟にて、一部共用エリアの通信環境整備にJTOWERのインフラシェアリングを導入いただきました。キャンパス開設時の工事では携帯キャリア各社の個社対策にて通信環境整備を実施されたとのことですが、H棟にてインフラシェアリング導入を検討いただいた背景を教えてください。

2015年にこの大阪いばらきキャンパスを開設した時、公衆通信の整備は携帯キャリア各社とそれぞれ個別契約で進めました。一度整備を終えても、設備の更新などが随時あり、そのつど各キャリアから打診があり、それぞれと調整をしながら進めなくてはなりません。さらに、楽天が新たに追加され、屋上に設備を置きはじめたりと、引き続きやりとりが続いています。
H棟の開設を検討する前にJTOWERの紹介があり、インフラシェアリングの仕組みを知りました。1社でまとめて調整してもらえるのは本当に助かります。大学職員で通信に詳しい人は限られますし、携帯キャリア各社それぞれで契約内容や条件も似ているようで違います。共用の設備で、携帯キャリアとの窓口が一本化されることは魅力に感じました。
携帯キャリア各社との調整の場合、多少の賃料を得ることはできますが、トータルで考えると、今回H棟にインフラシェアリングを導入したことで、基地局設置にかかる人件費は大幅に削減できたと考えており、完成後の調整も省力化されることから、大きなメリットがありました。今後も校舎を新設するときはぜひお願いしたいと思っています。

―導入までのJTOWERのフォロー体制や導入後の通信環境についてのご評価はいかがでしょうか。

導入後の不具合の報告は全くありません。導入までも、それぞれの携帯キャリアと何一つやりとりをすることもなく、すべてワンストップ。JTOWERとのやりとりだけで進めることができ大変助かりました。
2015年の大阪いばらきキャンパス開設時に比べ、限られた体制の中でH棟の開設準備を進めなくてはならなかったため、 JTOWERに入ってもらっていなかったら、大学のWi-Fi環境の整備にとどまり、共用部の公衆通信の整備はできていなかったのではないかと思います。

―今後、このキャンパスがどのように活用され、コラボレーションやイノベーションが生み出されることが期待されていますでしょうか。

大阪いばらきキャンパスは、H棟整備を契機に、社会課題を解決するための実証実験や価値創造が行われる場「ソーシャルコネクティッド・キャンパス」というコンセプトのもと、社会とのつながりを広げ、立命館大学が目指す「イノベーション人材・創発性人材の輩出」に向け、先陣を切っていく役割を担っています。
立命館大学では、社会共創により、本学における研究と教育を社会のテーマや課題に結び付け、学内各部の取り組み領域を横断して、全学の知見と学外も含めたネットワークによって支えるため、「社会共創推進本部」を設置しています。全学の研究・教育のリソースをそれぞれの課題解決に結び付け、各種取り組みを推進・支援する本部となる「社会共創推進課」がこの大阪いばらきキャンパスに置かれ、ここから、社会共創とともに、その解決を担う人材の育成をリードしていきます。
まだ一年目ですし、目に見える結果はこれからだと思います。ここから実際に学生が起業したり、社会課題を解決する人材としてを輩出されていくことを期待していますし 、そうした学生が多数出てきて欲しいです。ここにはそれらを後押しできる仕組みや施設も整備できたらと思います。

誰もが挑戦できる場「TRY FIELD」で実践し、挑戦し続ける人々を後押しする空間として、今後も進化を続けられるよう、支えていきたいと思います。