株式会社TOKYO-BAYアリーナマネジメント「LaLa arena TOKYO-BAY」

屋内インフラシェアリング 2024年4月
アリーナ

  • 所在地

    千葉県船橋市

  • 延床面積

    約31,000㎡

  • 構造

    地上4階

ユーザーのことを考えるなら、電波を携帯キャリアで選ぶのではなく一つにまとめられた方がいい

数々の大型プロジェクトを手掛ける三井不動産とコミュニケーションを軸に幅広いサービスを展開するMIXIの共同事業として2024年5月に開業を迎えた「LaLa arena TOKYO-BAY」。建物内の通信環境整備にJTOWERの屋内インフラシェアリング・ソリューションを採用いただきました。
MIXIのスポーツ事業のご担当から、現在はアリーナの管理・運営を手掛ける新会社「株式会社TOKYO-BAYアリーナマネジメント」にて通信設備をはじめとする施設全体の管理を管掌する赤坂様に、通信環境整備の方針やスポーツ事業に取り組む意義などについてお話をうかがいました。

お話をうかがった方

株式会社TOKYO-BAYアリーナマネジメント
取締役 営業本部 施設管理部 部長
赤坂 峻一 様

駅や商業施設との連携の中でアリーナが存在し、訪れた人が一日を通して楽しめ、エリアの賑わいに貢献する、日本の「体育館」にはこれまでなかったコンセプト

― LaLa arena TOKYO-BAYはどのようなコンセプトをもつ施設なのでしょうか?

LaLa arena TOKYO-BAYは、B.LEAGUEに所属し千葉県船橋市をホームタウンとするプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」のホームアリーナを軸に、音楽コンサート、展示会など、バスケットボールの試合以外の利用も幅広く想定した多目的アリーナです。約1万1,000人を収容できる、アリーナとしては大きな施設で、各種イベントのほか、スポーツではバスケットボール以外にも、卓球、バレーボール、アイスショーも実施できます。
これまで日本にあった「体育館」とは異なり、駅や商業施設との連携の中でアリーナが存在し、訪れた人が一日を通して楽しめ、エリアの賑わいに貢献するというコンセプトです。

― 新アリーナはどのような経緯で建設が決まったのでしょうか?

MIXIでは、2019年4月に千葉ジェッツと資本提携を行い本格的に運営に関与することになったのですが、その頃から、試合のチケットが取りづらく、機会損失が課題となっていました。さらにBリーグでは、プロスポーツとしてより高いレベルを目指すため2026年からのリーグ改革を発表し、ホームアリーナの収容人数等の新たな基準が示されました。既存の体育館では基準を満たすことはできず、模索をしている中で三井不動産との共同事業が決まりました。
先方も「スポーツ・エンターテインメントを活かした街づくり」を新たな事業の柱とする機運が高まっていた時期でした。MIXIもスポーツとデジタルエンターテインメントの力で地域社会に貢献することを標榜してスポーツ事業に注力していましたし、様々な要素があいまって共同事業の話がまとまりました。

数多くの大型プロジェクトを手掛け、高いブランド力をもつ三井不動産との共同運営が実現したことで、音楽コンサート、スポーツイベント、企業の展示会など様々な用途の可能性が広がります。また、南船橋で「ららぽーとTOKYO-BAY」や「ららテラスTOKYO-BAY」といったショッピングモールとも連携し、地域に密着した強固なプロジェクトが実現しました。

― スポーツ事業はMIXIの中でどのような位置づけとされているのでしょうか?

MIXIは、「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」をパーパスとして掲げ、「『心もつながる』場と機会の創造」をミッションに、仲間や家族とつい話題にしてしまうような楽しくてワクワクする「コンテンツ」や、そこから生まれる感情を一緒に分かち合う「場と機会」の創出を目指しています。
多くの皆さんがMIXIにデジタルのイメージをお持ちではないかと思いますが、Webサービスや「モンスターストライク」をはじめとするゲームのほか、ウェルネス事業など、私たちのパーパスを軸に展開を進めている事業の一つが「スポーツ」です。
スポーツは、みんなでやったり、家族や友人と一緒に見に行ったり、自然とコミュニケーションが生まれます。私たちとしても、コンテンツとしてスポーツを直接手掛けることで、ビジネスの広がりにつながっています。

キャリアの電波が安定的に提供されるから、フリーWi-Fi整備は必要最低限にとどめ、コストを大幅に抑えることができました

― 通信環境整備にはJTOWERを採用いただきました。JTOWERのサービスについてはどのような印象をお持ちでしたでしょうか?

JTOWERの屋内インフラシェアリングについては、これまでも「ららぽーと」をはじめ、三井不動産の施設で多くの実績があるとのことで、ご紹介いただいたのが最初のきっかけです。
MIXIで過去に携帯電話事業を検討していたとき、ユーザーのことを考えるなら全キャリアとの連携が必要ではないかという発想があり、それに近いものを感じました。電波も携帯キャリアで選ぶということではなく、建物で一つにまとめていく方がよいですし、おもしろいサービスだと感じました。

来場者の利便性としては、キャリアの電波が安定的に提供されることが最も良いだろうという方針で、施設の通信環境は、JTOWERのサービスを使うことを前提に設計を行いました。
施設内では携帯キャリアの通信環境が安定的に提供されるため、フリーWi-Fiは、本来は無くてもよいくらいです。そのため整備は必要最低限にとどめ、コストを大幅に抑えることができました。

― JTOWERの設備を導入後、通信環境はいかがでしょうか?

もともと南船橋駅周辺は電波環境が良いとはいえないエリアなのですが、アリーナに来たら電波が弱いということはありません。施設内のネットワーク環境も良く、通信速度も出ています。
用途としては、来場者の通常の通話とインターネットのほか、スマートフォンでの決済も当たり前に使われるようになっていますが、今のところ問題は起きていません。

― 通信技術を活用したイベントの開催も視野にインフラの整備を行っているのでしょうか?

例えば、ゲームアプリやeスポーツのイベントとなると、パブリックな通信環境には依存せず、イベント独自の通信環境を用意することになります。そうした特別な通信環境を必要とするイベントでない限り、1万人の来場者が通常のネットワークを快適に利用できれば、ベースの通信環境としては問題ありません。それ以上の環境が必要な場合は、テンポラリーな環境設計をイベントに合わせて行うことがベストという方針でインフラを設計しています。

またこの施設には、MIXIの他の事業で得られたノウハウも活かされています。
例えば、MIXIではローカル5Gの免許を取得しており、千葉県千葉市の「TIPSTAR DOME CHIBA」には、このローカル5Gを活用した映像伝送システムを構築し、映像配信を行ったりしています。自転車レース専用の車載カメラも自社で開発しました。こうしたカメラや映像配信、双方向での通信、AIでの情報分析からコミュニティにつなげていくようなノウハウを、アリーナでもバスケットボールの試合やイベントでの顧客体験につなげていけないかと、新たなビジネスの機会を考えています。

インフラ側としては、今後の様々な拡張性に備え、電源や通信のルートが足りないということが起きないよう整備を行ってあります。例えば、この施設内には各所に光ファイバーが張り巡らされており、エリアごとにスイッチで渡すことができるようになっています。必要な通信環境を素早く、柔軟に構築できるアリーナを目指しました。

― MIXIでは、Webアプリやゲームから、コミュニケーションを軸にウェルネス、スポーツと事業領域を広げられていますが、さらにアリーナの運営と、常に新たな挑戦を続けて来られています。

モンスターストライクが大ヒットしてから、サーバエンジニアは毎年、年末カウントダウン等イベントでのネットワーク対策に腐心してきました。そうした経験から、社内にはネットワークのエンジニアが増え、その部隊がネットワーク設計にも携わり、サービスを発信するところから下支えできる体制ができました。通常であれば外部に委託するようなネットワークの対応も実は内製で行っているんです。この施設でもそうしたノウハウが活かされました。
自分たちでやってみよう、やってみて失敗もしてみよう、というのがMIXIの社風です。

スポーツ事業が広がり、さらにアリーナを建設し、運営していくということに関しては、経験豊富な三井不動産との協業という心強い体制ではあるものの、MIXIとしては新たなチャレンジです。
スポーツ施設やアリーナのDXに挑戦し続けることには大きな意義があると考えており、特に、ソフトウェア面での継続的なアップデートは重要です。他の事業で培ってきた知見をアリーナにも活用し、さらに、アリーナの運営から得た知見もしっかりと蓄積し、次の展開につなげていきたいと考えています。